【消費税のしくみと手続き】
①消費税の概要
消費税は、一定の商品の販売やサービスの提供などに課される税金です。原則として事業者が納めますが、事業者は販売する商品やサービスの価格に消費税分を上乗せしますので、最終的にはその商品やサービスを購入する消費者が消費税を負担することになります。
消費税は税金を納める人(納税義務者)と、税金を負担する人(担税者)が異なる間接税です。
※消費税の課税対象:国内において事業として対価を得て行われる資産の譲渡・貸付けやサービスの提供が消費税の課税対象となります。ただし土地の譲渡など一定の取引については非課税とされています。
②納税義務者と免税事情者
一定の国内取引と輸入取引については、消費税の納税義務があります。ただし要件を満たす場合には、納税義務が免除されます。
?納税義務者
消費税の納税義務者は、国内取引と輸入取引とで異なります。
①国内取引
資産の譲渡、貸付けおよびサービス(役務)の提供を事業として行う個人事業者と法人
②輸入取引
外国貨物を保税地域から引き取る(輸入する)人
※輸入取引について補足:輸入取引は課税対象ですが、輸出取引は日本国内で消費されるものではないので、免税とされています。
?免税事業者
消費税は小規模な事業者の事務負担などに配慮して、売上が一定規模以下の場合、原則として納税が免除されています。これを免税事業者といいます。
①免税事業者の要件
・基準期間及び特定期間の課税売上高が1,000万円以下であること
②基準期間
・個人事業者…その年の前々年
・法人 …その事業年度の前々事業年度
③特定期間
・個人事業者…その年の前年1月1日から6月30日までの期間
・法人 …その事業年度の全事業年度開始の日以後6ヶ月の期間
※特定期間については課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額で判定することができます。基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、特定期間の課税売上高又は給与等支払額の合計額のいずれかが1,000万円以下の場合、免税事業者となります。
※補足:平成25年1月以降、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、前年の1月1日(法人の倍は全事業年度開始の日)から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、当課税期間において課税事業者となります。
④新規開業等の場合
新規に開業したり法人を設立した場合は、当初の2年間は基準期間がない為、原則として免税事業者となります。ただし、資本金が1,000万円以上の法人については納税義務が免除されず、課税事業者となります。
③非課税取引
消費税には「消費」に負担を求める税としての性格がある為、課税に馴染まないものや、社会政策的な配慮が必要なものは非課税とされています。
◆消費税が非課税となるケース
【消費税の課税に馴染まないもの】
・土地の譲渡、貸付け
・債券、株式の譲渡
・利子を対価とする金銭の貸付け(預貯金の利子等)
・郵便切手、印紙等の譲渡
・商品券、プリペイドカード等の譲渡
・行政手数料
・外国為替手数料
【社会政策的な配慮を必要とするもの】
・住宅の貸付け
・社会保険医療等(健康保険検診など)
・社会福祉事業等
・助産費用等
・埋葬料、火葬料
・身体障害者用物品の譲渡、貸付け等
・一定の学校の教育費
・教科用図書の譲渡
※土地の譲渡:建物の譲渡は課税となります。したがって土地付建物を売却した場合などは、土地と建物の内訳の金額を把握する必要があります。
※住宅の貸付け:非課税となるのはあくまで「住宅の貸付け」で、店舗や事務所としての貸付けは課税されます。また、仲介業者に支払う仲介手数料は課税となります。
④税額の計算
消費税の計算には「一般課税」と「簡易課税」があります。
?一般課税(原則)
消費税の納税額は次の算式で計算されます。
◆一般課税(原則)による納税額
課税売上に係る消費税額ー課税仕入れに係る消費税額=納付税額又は還付税額
※補足:原則的な計算方法である一般課税は、課税期間の課税売上高が5億円以下でかつ、課税売上割合が95%以上の場合に適用されます。一方、課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の場合、「課税売上に係る消費税額」から控除することができるのは「課税仕入れに係る消費税額」の全額ではなく、課税売上に対応する部分のみとなります。なお課税売上割合とは、課税期間の課税売上高を、課税期間の総売上高(非課税売上高を含む)で除して計算した割合をいいます。
※課税売上と課税仕入:要は消費税がかかる取引の事。
※ポイント:課税売上に係る消費税額が課税仕入に係る消費税額を下回る場合、差額は還付となります(返金されます)。ただし、免税事業者は課税仕入に係る消費税額
の控除は認められないので、還付を受けられません。
?簡易課税制度
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、一般課税の原則的な計算に代えて、簡易課税制度を選択することができます。簡易課税制度とは、課税仕入れに係る消費税額を計算せずに、簡便な方法で納付税額を計算出来る制度です。
簡易課税制度による納税額は次の算式で計算されます。
◆簡易課税制度による納税額
課税売上に係る消費税額ー(課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)=納付税額
この算式中のみなし仕入率は、売上に対して一定割合の仕入等が発生しているものとみなした数値で、事業の区分によって次のようになっています。
◆事業区分によるみなし仕入率
第一種 卸売業(90%)
第二種 小売業 (80%)
第三種 製造業・建設業・農業など(70%)
第四種 飲食店業など(60%)
第五種 金融業・保険業・サービス業など(50%)
第六種 不動産業(40%)
?消費税等の税率
消費税等の税率は、消費税と地方消費税を合わせて8%となっています。
◆消費税等の税率
消費税6.3%(国税)+地方消費税1.7%(地方税)=8%
⑤申告・納付
?消費税の確定申告と納付
原則としてそれぞれの日までに申告をし、納税します。
・個人事業者:課税期間の翌年の1月1日から③月31日まで
・法人:課税期間終了の日(決算日)の翌日から2ヶ月以内
?中間申告と納付
直前の課税期間の消費税額が48万円(地方消費税込みで60万円)超の場合は、次の表のように中間申告をし、納税します。
◆中間申告・納付の期限(表)
⑥届出と提出期限
消費税には各種の届出書があり、期限内に届出書を提出しなければ適用を受けられないものがあります。
◆各種届出と提出期限(表)
※簡易課税制度や課税事業者を選択する場合だけでなく、取りやめる場合も届出書を提出する必要がある。
※課税事業者届出書:届出書を提出していなくても、基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円超であれば消費税は課税されます。
※課税事業者と簡易課税制度の選択について
課税事業者および簡易課税制度は、一旦選択をすると原則として2年を経過するまでは取りやめる事ができませんので、2年通しての検討が必要です。なお、簡易課税制度選択届出書を提出している場合であっても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合には、その課税期間については簡易課税制度は適用できません。
⑦消費税が還付される場合
免税事業者は納税が免除されていますが、課税仕入れに係る消費税額の控除が認められません。ですから「課税売上に係る消費税額<課税仕入れに係る消費税額」の場合でも還付を受けることはできません。
このような場合「課税事業者選択届出書」を提出することによって課税事業者を選択すれば、還付を受けることができます。
輸出取引が多い、または多額の設備投資を行う予定であると言った消費税が還付される可能性がある場合などは、課税事業者を選択するかどうか検討する必要があります。