①役員の範囲
会社が支給する給与(報酬または給与、賞与、退職給与)は、役員給与と使用人給与の2つに区分されます。使用人給与は原則として損金に算入されますが、役員給与はその種類によって税法上の取り扱いが異なります。
⑴税法上の給与の取扱い
法人税では給与の取扱いについて、種類と受給者により異なります。
◆給与の取扱いの区分
<給与の種類>
給与・報酬
賞与
退職給与
<誰が受給するか>
役員
使用人兼務役員
使用人
⑵税法上の役員の範囲
法人税法上の役員の範囲は、会社法上の役員の範囲よりも広くなっています。
◆役員の範囲
図
※みなし役員:法人の役員として冬季されていなくても、その地位・職務等からみて他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められる者は、法人税法においては役員と同じ扱いをされる者のことを「みなし役員」といいます。
※使用人:一般従業員のこと
⑶同族会社の特定株主とは
同族会社の特定株主は次の全てに該当する人をいいます。
◆特定株主の3つの要件
50%超基準:上位3位以内の株主グループの持ち株割合の合計が50%超となる
場合、その株主グループのいずれかに属していること
10%超基準:その人が属する株主グループの持ち株割合が10%超であること
5%超基準:その人(配偶者等を含む)の持ち株割合が5%超であること
※株主グループ:株主の親族など一定の者が含まれます。
※同族会社とは:株主とその同族関係者を1つのグループとして、上位3つのグループが所有する株式等がその会社の発行済株式などの50%超となる会社をいいます。つまり上位3つの株主グループが株式等の過半数を占める場合、同族会社となります。
図
⑵使用人兼務役員とは
役員のうち、部長や課長など法人の使用人としての職制上のちいをもち、常時使用人としての職務に従事している人は、【使用人兼務役員】となります。取締役営業部長などの使用人兼務役員は、使用人と役員の側面を併せ持っているので、法人税法上の給与は役員の給与部分と使用人の給与部分に分けて取り扱います。
ただし以下の人は使用人兼務役員とはなれず、役員として取り扱われます。
◆使用人兼務役員になれない人
社長・副社長・理事長・代表取締役・専務取締役・専務理事・常務理事・同族会社の役員で特定株主に該当する者 等
⑶報酬や給与の取扱い
「給料」「賞与」などを総称して、【給与】といいます。この「給与」は定期的なものと、臨時的なものとに分けられます。
あらかじめ定められた支給基準に基づいて、毎週や毎月など月以下の期間を単位として規則的に反復・継続して支給されるものを定期の給与といいます。
「定期の給与」は、使用人に支払われる【給料】と、役員に支払われる【報酬】とに分けられます。使用人給与は、原則として全額損金に算入できますが、役員給与は利益操作につながりやすいため、不相当に高額な部分は損金不算入となります。
※不当に高額な部分かはどうかは、実質基準と形式基準によって判定します。
実質基準:職務の内容、会社の収益、使用人に対する給料の支給状況、同業種
同規模の会社の役員報酬・役員賞与の支給状況などから見て適正か
どうかを判定する基準のこと
形式基準:定款の規定、または株主総会等の決議によって定められた額を超え
ていないかどうかで判定する基準のことです。
⑷役員給与の取扱い
役員給与(退職給与以外)は、①定期同額給与 ②事前確定届出給与 ③利益連動給与のいずれかに該当する場合には、原則として損金算入となります。
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①定期同額給与
支給時期が1ヶ月以下の一定期間ごとでかつ、各支給時期における支給金額が同額である給与。
②事前確定届出給与
役員の職務につき、所定の時期に確定額を支給する定めに基づいて支給する給与で、所轄税務署長にあらかじめ届け出ているもの。
③利益連動給与
同族会社には該当しない内国法人が業務執行役員に対して支給する業績連動型の給与で、その算定方法が客観的であり、その内容が有価証券報告書で開示されているもの。
⑸退職給与の取扱い
退職給与とは、退職によって役員やし油人に支払われる一切の給与をいい、法人税の取り扱いは次のようになります。
図
役員退職給与で「不相当に高額な部分」とは、支給した退職給与の額がその役員の在職期間、退職の事情、類似法人の退職給与の支給状況等に照らして、適正であると認められる金額を超える部分をいいます。
不相当に高額かどうかは実務的には判断が難しいものですが、適正金額の算出方法の1つとして【功績倍率方式】というものがあります。
◆功績倍率方式による計算式
役員退職給与の適正額=最終報酬月額×在職年数×功績倍率
※功績倍率:在職時の功績に応じておおむね1〜3倍程度です。