【法人税法上の「所得」】
①法人税法上の「所得」とは
法人税は法人の「所得」に対してかかる税金です。まずは「会計上の損益」をおさえた上で、法人税法上の「所得」について確認します。
⑴「会計上の損益」とは
「会計上の損益(企業利益)」は、会社を取り巻く利害関係者(株主や債権者など)に経営成績を報告するための企業会社上の数字です。法人の1会計期間(事業年度)の「会計上の損益」は、次の算式で算出されます。
◆「会計上の損益」の計算式
会計上の損益=収益ー費用
⑵法人税法上の「所得」とは
法人税は法人の「所得」に税率を乗じて計算しますが、その「所得」は次の算式で計算されます。
◆「所得」の計算式
所得=益金ー損金
「益金と収益」「損金と費用」はそれぞれ範囲がやや異なりますが、「益金」は税務上の収益、「損金」は税務上の費用のようなものです。
②「所得」と「会計上の損益」の違い
⑴「所得」と「会計上の損益」は異なる
「所得」と「会計上の損益」は同様の算式で計算されますが、ほとんどの場合は一致しません。なぜなら「会計上の損益」は、その法人の収益力などの状態を表すものであるのに対し「所得」は、法人の課税対象となるものだからです。
所得≠会計上の損益
※会計上の損益のことを損益計算書では当期純利益(損失)という
⑵「所得」はどのように計算するか
法人税の課税対象である「所得」金額は、法人の「確定した決算に基づいて」計算することとされています。つまり「会計上の損益」を基に計算します。
ところが「会計上の損益」に対して、各種の調整をする必要があります。
このように法人税法上の「所得」金額を計算するために、「会計上の損益」に各種の調整をすることを「申告調整」といいます。
◆税務調整のイメージ
所得金額 = 【決算調整】会計上の損益
+
【申告調整】加算(益金算入・ 損金不算入)
ー
減算(益金不算入・ 損金算入)
※決算調整について:法人税法上の規定の適用を受けるために、法人の確定決算(株主総会で承認されたもの)において所定の会計処理をしなければならないもので、申告書だけで調整することは認められません。
※申告調整について:会社の経理処理にかかわらず、企業会計に基づく損益の額に加算・減算を行うことにより法人税法上の所得金額を計算する方法です。法人税申込書(※)という明細書で計算されます。
図表
⑶申告調整
・益金算入(益金に算入する)
会計上の損益計算では収益ではないが、所得計算では益金とするもの
決算利益に加算 ➡︎ 課税対象が増える
・損益不算入(損金に算入しない)
会計上の損益計算では費用であるが、所得計算では損金としないもの
決算利益に加算 ➡︎ 課税対象が増える
・益金不算入(益金に算入しない)
会計上の損益計算では収益であるが、所得計算では益金としないもの
決算利益から減算 ➡︎ 課税対象が減る
・損金算入(損金に算入する)
会計上の損益計算では費用ではないが、所得計算では損金とするもの
決算利益から減算 ➡︎ 課税対象が減る