3人に1人はがんで死ぬ。
そんなネガティブなイメージに反して、今はがんと診断されても以前より長く生きられる時代になりました。
がん診断のテクノロジーの向上に加えて、新しい治療の方法がつぎつぎに登場しています。
2006年に「がん対策基本法」ができてからは、レベルの高い医療を地方で受けられる体制も整ってきています。
より長く生きられる時代になってきたのと同時に、新しく問題となってきた中長期的な医療費、つまりはお金がかかるのです。
がんの治療は、ほとんどが保険診療なので、高額療養費制度を利用すればふつうは「1ヵ月あたり9万円以下」くらいでおさまります。(※年収770万円以下の場合)
ただしがんの治療は手術や放射線治療の後に、数ヶ月~1年ほど抗がん剤を投与するケースが珍しくありません。
また乳がんや前立腺がんの治療では、何年にもわたってホルモン剤を投与することもあります。
治療薬にもよるでしょうが、年間で「100万円近く」かかることもあります。
さらに抗がん剤の副作用によって、働くことが制限され結果「収入が減る」ケースもあるでしょう。
年収から年間100万円の医療費を引いて残りで生活する…とてもきついことが想像できます。
がん保険に入る前に考えること「再発してしまったら」「長い期間治療することになったら」
とてもレベルの高い「検診」によって「がんの早期発見」が増え、そのあとの「治療法」にも高い技術によって、「がんは治る」時代となりました。
現にがんの5年生存率は62.1%まで伸びています。とてもすばらしい事です。
ただそこから、再発してしまってさらに5年10年と治療が続いていくことも考えていかなければいけません。
がん保険に求めること、それは一時給付でも治療給付でも「治療期間中繰り返し給付されるか」におのずとなってきます。
がん保険は「繰り返し出る給付」が何よりも重要
がん保険は医療保険よりも、「保証してくれる範囲がせまい代わりに保険料が安い」ので最低限の備えとしてはOKですが、
一昔前のがん保険は見直しをしたほうがいいです。
ココに注目
◆一時金が一回きりである。
◆がんの再発や転移がみつかっても給付は無しである。
◆入院日数に応じて給付金が出るがん保険には落とし穴がある。
がんの入院日数は平均17.1日で全疾病の平均29.3日より短く、実際には一週間を切るケースも多い。(内視鏡手術なら一日とも)
最近のがん保険は「通院」で抗がん剤治療が出来るケースが増えているが、その場合も「給付されない」。
これらを踏まえると、がん保険に入るなら治療の継続にあわせて給付金が複数回受取れることが望ましいといえます。
対象のがん保険には2つのタイプがあります。
まずは「2年に1回まで」などの条件のもとで一時金が何度でも出るタイプ。
ここで確認しておきたいのが「2回目以降」に給付金が出るタイミングですが、
1回目の一時金は、どの保険がんと診断されたときに出る。
2回目は「入院」が条件になっている会社が多い。
この点アフラック生命保険とFWD富士生命保険は「がんの治療が目的」であれば「通院」でも一時金が給付されるので安心。
そしてもう一つが、最近増えてきた治療給付タイプ。
これは手術・放射線・抗がん剤などの治療を受けた月「だけ」給付金を出す仕組み。
つまりは療養が長引いても、治療した月は給付金が出るというもの。
がん保険の給付金額を多めに設定すれば、治療期間のあいだ仕事のリスク(収入が減るリスク)にそなえることもできますね。
では、「何回も出る一時金」と「治療給付金」のどちらがいいのでしょう。
一時金給付と治療給付のメリット・デメリット
一時金給付について
一時金給付のがん保険とはがん診断時にまとめて給付されるものです。
メリット
・用途に関わらず使える。
・将来、治療方法が大幅に変わっても対応できる。
・給付の手続きが簡単。
デメリット
・短期の治療でも多額に出るので、保険料が高い可能性も。
・治療が長引いたときに足りるか不安。
最近は診断一時金が何度も出るがん保険が主流。1回目は診断確定時に出るが、2回目の給付タイミングは保険会社により違うので注意。
治療給付について
治療給付のがん保険はがん治療を受けた月だけ給付されるものです。
メリット
・治療が長引いてもその間は給付が続く。
・保険料が比較的安い。
デメリット
・新たな治療法が一般的になった時に対応できるかが不透明
・治療が無い月の療養中に給付が無い場合がある。
治療給付金は治療や投薬を受けた月に保険金が出る。投薬が長期化することもあるので、治療薬の処方が月をまたいだ時に複数回の給付がある「長期処方」に
対応した保険が安心。
これらを比べたときのPOINT
◆治療給付金の方が保険料が安い。安い保険料で長期治療に備えるという点では治療給付金が良い。
◆治療給付金で選ぶときは「抗がん剤の長期処方」への対応も重要です。
◆長期処方に非対応だと例えば、90日分の治療薬をまとめて処方されても1か月分の給付金しか出ない。
◆抗がん剤の投与中は副作用で満足に働けない可能性があるので、収入を補う意味でも、出来れば長期処方対応の保険を選びたい。
がん治療最前線のおはなし
今後保険の枠に収まらない治療が広がる可能性もある
例えば、今後期待が大きいがん医療の一つに、がん細胞の遺伝子情報を調べて効果的な治療薬を探す「がんゲノム医療」があります。
遺伝子情報を調べるための「がん遺伝子パネル検査」の一部が2019年6月に保険適用になり、従来よりも安く受けられるようになりました。
一度受けたがん治療で効果が無かった人や、希少がんの患者が新たな治療にたどり着く手掛かりになると期待されています。
しかしこの検査自体は治療ではないので、がん保険の治療給付金が出るかどうかは不透明。
検査後に推奨される治療薬が保険適用外であるため、先進医療や患者申出療養、治療などをうけることもあり得ます。
このようにがん保険はこうした治療の状況を意識して定期的に見直していくのが正解だといえます。
その他保険適用となった新しい治療
2018年4月に、これまで高額になりがちな先進医療だった治療も一部、保険診療に入りました。
<ロボット支援手術>
胸腔鏡下の食道がん、肺がん、腹腔鏡下の直腸がんなど14種類の手術
<陽子線・重粒子線治療>
小児腫瘍、頭頸部がん、前立腺がん、骨軟部腫瘍の一部など
<免疫療法>
免疫チェックポイント阻害剤やサイトカイン療法など
(参考までに)
2018年末に本庶佑氏らがノーベル賞を受賞して話題の「免疫チェックポイント阻害剤」も2016年から一部保険適用。
がん保険についてのまとめ
- がん保険は再発や長い期間治療のリスクを想定し検討する
- 繰り返し出る給付かどうかを確認
- がん治療の進歩を意識して定期的に見直す